ニュースで「円安が進んでいる」という話をよく聞きますね。円安(英語訳:weak yen)・円高英語訳:strong yen)は、円の価値が安くなることと、高くなることです。
市民の生活を圧迫して大変だともよく言われます。しかし、円安がなぜよくないと言われるのでしょうか?
聞かれて即座に答えられる人は少ないかもしれません。
そこで今回は円安とはどういったものなのか、そして、なぜ円安が発生しているのかなど原因やいつまで続くのかを解説します。
円安・円高とは
円安とは、「円の価値が安くなっている」という意味です。一方で円高は「円の価値が高くなっている」です。
世界中で英語が共通言語として話されているように、世界の共通の価値基準となる通貨はドルです。
そのため、ドルで見た時に日本円が安くなっているか、高くなっているかを円安、円高といいます。
たとえば、1ドル100円だったとします。そして、来月には1ドル120円になるとすると、ドルに対して、円の価値が下がっているので円安と表現できます。反対に、1ドル100円から90円になれば円の価値が上がるので円高です。
もっとわかりやすく言うと、1ドル札を持ったアメリカ人が日本に2回旅行に来たとしましょう。今月来た時は1ドルでケーキが1つ買えますが、来月来た時には1ドルでケーキが2つ買えるようになっていました。
おそらく、アメリカ人は「安い」と感じたはずです。つまり、これが円安です。逆に、1ドル1つのケーキが、来月には半分になっていたら「高い」と感じます。これは円高ですね。
ドルを中心にして、どれだけの量の日本円がもらえるのかな?と考えて、多ければ(安ければ)円安、少なければ(高ければ)円高です。
なぜ円安・円高になるのか?原因は
なぜ円安や円高になるのか、その代表的な原因は以下の通りです。
- 国内物価
物価が上昇すると円安、下落すると円高 - 国際収支(貿易や投資などの海外との金銭のやり取り)
金融取引や投資家のマネーの動向で左右される - 日本の政策や海外との金利差
円安・円高を目指すか政策で左右される一方で、日米などの金利差で為替も変化
それぞれ詳しく解説します。
国内物価
国内の物価が上昇する(インフレーション)ならば、物やサービスの価格が上がるのと同じです。同じ1000円を持っていても変える商品が少なくなります。つまり、日本円の価値が下落していることになります。結果的に円が安くなって円安になります。
その逆も同じです。物価が下落してデフレーションになるならば、同じ額面のお金でもできることが増えます。そのため、日本円の価値が上がることになります。結果的に円高を招くことになります。
ちなみに、物価要因だけではなく、物価をコントロールする政策によって為替相場も影響を受けるので一概には言えません。
国際収支
投資家や企業、そして政府などのお金のやり取りによって為替相場も変動します。たとえば、みんながドルの価値が高くなると思えば、円を売ってドルを買う動きになるので、円安ドル高になります。
また、日本はエネルギーの大半を輸入していますが、輸入時にはドルで決済しなければなりません。つまり、ドルを買わないと取引できないので、円安の要因になります。
そして、輸出で日本の製品が海外で売れて儲かったお金を一気に日本円に戻そうとすると、円買いになるので円高に為替が変化します。
日本の政策や海外との金利差
日本が円安・円高のどちらを目標としているのかで、為替相場も影響を受けるようになります。
また、それ以上に海外との金利差で円安と円高が決まります。金利が高いと、その国の通貨を保持して預金していればお金が増えます。そのため、金利が高い方にお金が集まりやすくなります。
金利が高いと円高、金利が安いと円安になるという傾向があります。
円安・円高のメリットとデメリット
円安と円高のメリット・デメリットは以下の通りです。どうなるのかをまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
円高 | 輸入品が安くなる 海外旅行が安くなる |
輸出企業が儲からなくなる 企業が海外に移転してしまう |
円安 | 輸出が儲かるようになる GDPが上がりやすく海外資産が増えやすい |
輸入品が高くなる 海外旅行が高くなる |
このように円安と円高はどちらがいいかは決められません。それぞれによいところと悪いところがあります。
影響を詳しくみてみましょう。
円安の場合、それまでドルなど外貨預金で海外の資産を持っていた場合、日本円に比べて海外資産の価値が相対的に向上するので資産が増加します。また、日本の製品が海外で売れやすくなるので輸出関連企業が儲かるようになります。
一方で、輸入品が高くなるので、海外の食品を扱っているスーパーはもちろん、レストランなどでもメニューの値段が上がるようになります。そして、日本人が海外旅行に行こうとしても、円安ならばお得感がなくて海外の物価が高く感じます。
それから円高になった場合は、輸入品が安くなるので国内のレストランの価格が下がります。日本人が海外旅行に出掛けても物価が安いと感じられます。
その一方で日本のものづくり産業など海外に輸出しても儲けが減ってしまうデメリットがあります。それから日本国内で製品を組み立てるよりも海外に移転した方が安くなるので、どんどん企業が海外に逃げてしまう可能性があります。
個人にメリット・デメリットはあるのか
円安と円高それぞれに、個人でもメリット・デメリットが存在します。
たとえば、円高の時には、米国株が安くなるので買い時になります。そして、円安になれば為替レートの恩恵を受けて保有している米国株の価値が上がります。
この逆はデメリットにもなります。円高の際には保有している米国株の価値は下がるので、損をします。一方で円安の時に米国株を購入しようと思っても高く感じてしまうでしょう。
ちなみに、輸出関連の日本企業も恩恵を受けるので、以下のような企業は円高・円安でメリットを受けます。
円高でメリットを受ける企業
- 日本ハム
- コスモエネルギーホールディングス
- ニトリホールディングス
円安でメリットを受ける企業
- トヨタ
- 日本郵船
- キャノン
円安・円高の株価やインフレ・デフレ
円安と円高は、株価やインフレ・デフレに以下のような影響を及ぼします。
インフレ | デフレ | 株価 | |
---|---|---|---|
円安 | 相互になりやすい | ならない | 高くなる |
円高 | ならない | 相互になりやすい | 安くなる |
インフレになれば、通貨の価値が下がることと一緒なので円安になります。
一方でデフレが通貨の価値が上がるので円高です。
そして、日本株は、円安の時には日経平均株価が上がります。一方で、円高時には下がります。
これは、日本の垣根の産業が自動車を海外に輸出する企業が多いので、円安と円高の影響を受けるためです。
また、円安になれば外国株より日本株がお買い得なので、株価が上がる環境が整っています。
円安・円高の対策方法
円安や円高が起こった場合、国が取れる対策としては為替介入です。
「為替介入を行う」と政府の要人が発言するだけでも、一定の効果を持つことがありますが、実際に行動を行えば為替レートは激しく変動します。
具体的には、円高の場合、円安にするために日本円を売ってドルを莫大に購入します。円安は逆で、ドルを売って日本円を買います。
日本政府が行う為替の売買なので個人や企業が行う取引の額とは桁が異なります。数兆円にもなるほどです。
ちなみに、円高を是正するために政府は2011年の東日本大震災後に円売りドル買いを行っており、2022年に円安是正のためにドル売り円買いを行っております。2022年時には3兆円ほどのお金が動いたと言われています。
2022年に起こった円安はやばい?
2022年3月ごろには1ドル115円だったのが、2022年9月今現在には1ドル145円付近までに円安が進んでやばいと言われています。
2022年はコロナ禍ですが、徐々に海外に行く人が増えてきました。そこでハワイに行く人たちの間で衝撃となったのが、日本とハワイの物価の違いです。
日本でチャーシュー麺に餃子を5個とドリンクを付けたセットは、1000円から1500円のイメージですが、ハワイであれば5000円です。日本の物価がどれだけ安くて、円安がどれだけ進行しているのかを考えるきっかけになりました。
円安はいつまで続く?どこまで進む?予想や理由は?
円安は今後、当面の間続いて止まらないと言われています。
最大の要因となっているのが、日米の金利差です。アメリカでは、新型コロナウイルス対策として金融緩和を行った結果、通貨量が多くなって物価が上がるインフレーションを起こしてしまいました。
インフレが進めば生活を圧迫するので、金利を引き上げてお金を使えない環境にしてインフレを撃退しようとしています。
一方の日本は長い間、デフレと呼ばれて物価が上がらない状況です。コロナ禍を迎えても物価が上昇することはありませんでした。
物価を上昇させて企業の収入を増やして個人の所得を増やしたいところですが、それには金利の引き下げが必要です。これはアベノミクスで安倍政権時代から金融緩和政策としてやってきたことでした。
しかし、その成果は出てていません。成果が出ていないまま、円安を撃退するために金利を上げてしまうと、もっと日本経済は悪い方向に向かってしまいます。そのため、低金利を継続するしかないのです。
低金利の日本と金利の高い諸外国の間で金利差が生まれて結果的に円安が続くという見方です。
円安の時にすること
円安の時にすることは、投資家目線では主に2つです。
- 外国株ではなく日本株に投資
- 輸出関連銘柄に投資を行う
外国株は、為替の変動を受けるので割高になります。円高の時に購入していれば資産が増えるので売却すればその分手元の日本円は増えます。
しかし、円安の時に外国株を購入しようとすると、割高になってしまうので注意すべきです。一方で日本株は割安になっているので買い時になります。
また、特に日本企業の中でも輸出関連銘柄を購入すると成長が見込めます。たとえば、トヨタ自動車は代表的な輸出関連名柄ですね。
ちなみに、円安時にドル建て保険はどうするべきかは個人によります。日本円の保険は払う保険料が安くてリターンも少額です。一方で円安時のドル建て保険は、保険料が高くリターンも多いです。
まとめ
今回は円安と円高についてわかりやすく説明しました。
円安と円高は勝手になるのではなく、さまざまな要因で為替が動きます。
また、それぞれにメリットとデメリットがあるので、どちらがよいかは決められません。
インフレや株価への影響も同じように存在します。
ぜひ、参考にしてみてください。