年金が減るという問題を聞いたことはありませんか?
この年金問題に絡んでくるのが「マクロ経済スライド」です。
しかし、マクロ経済スライドとは何か分かっている人が少ないのではないでしょうか?
そこで今回はマクロ経済スライドについて簡単にわかりやすく解説します。
マクロ経済スライドとは?簡単に分かりやすく
マクロ経済スライドは、簡単に言えば年金の受給額を引く仕組みです。
物価が上がった分だけ年金を上げるのではなく、調整を行って年金の受給額を減らしているのがマクロ経済スライドです。
年金制度の仕組み
マクロ経済スライド仕組みを理解するには、年金制度の理解も必要です。
年金は「毎年10万円」のように定額ではありません。なぜなら、時代によって物価が違うからです。
たとえば、1980年代には缶コーヒーが1本100円でしたが、現在では130円です。これだと、時代が異なれば同じ10万円を持っていても、買える物の量が変わってきます。
そのため、賃金や物価の変動によって年金の受給額も異なるのが普通です。
たとえば、2%のインフレで物価が上昇していれば、年金も同じように2%増えなければ中身は減ってしまいます。これが物価で年金を決めるいわゆる物価スライドです。
年金制度の問題点
年金制度の問題点は、日本の人口動態が変化して高齢化社会になっていることに起因します。
つまり、年金受給者のお年寄りが増えれば増えるほど、必要な年金も多くなるので足りなくなります。
そこで高齢化社会になっても年金制度を続けるために2004年に導入されたのが、マクロ経済スライドです。
マクロ経済スライドの計算
マクロ経済スライドを導入した後の年金受給額の計算は以下の通りです。
- 年金の引き上げ率 = 賃金、もしくは物価の上昇率 ー スライド調整率(公的年金全体の被保険者の減少率の実績と平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%))
賃金、もしくは物価の上昇率に関して、賃金より物価の上昇が大きい場合には賃金上昇率を使います。
そして、そこからスライド調整率を引いた値が年金の引き上げ率です。
たとえば、物価上昇率2%でスライド調整率が1.3%であれば、それらを差し引いた0.7%が年金の引き上げ率になります。
マクロ経済スライドの問題点
マクロ経済スライドの問題点は大きく分けて2つです。
- 物価上昇率に対応していない
- デフレ時にマクロ経済スライドが機能しない
順番に解説します。
物価上昇率に対応していない
マクロ経済スライドでは、賃金より物価の上昇が大きい場合には賃金上昇率を使って計算しますが、これだと年金が事実上減る場合もあります。
具体的には、物価が上昇していても、物価上昇率より低い賃金上昇率を使った計算では年金額は連動しません。
そのため必ず物価上昇率より低くなり、さらにスライド調整率で引かれるので年金額は事実上減ってしまいます。
たとえば、物価上昇率が2%、賃金上昇率が1.5%、スライド調整率が1%とすると、マクロ経済スライドを使った年金の上昇率は0.5%です。
年金が0.5%増えたとしても、物価上昇率の2%には追いつかないので実質減ってしまっています。
デフレ時にマクロ経済スライドが機能しない
また、マクロ経済スライドはデフレの時には行わない問題点があります。
デフレによって、物価や賃金の上昇率がスライド調整率より低い場合は、このマクロ経済スライドを発動しないというルールがあります。
しかし、年金が足りなくなることを懸念して、マクロ経済スライドを導入したのであれば、デフレに応じてマクロ経済スライドを使って年金受給額を減らすのが適切です。
たとえば、物価が下がって同じ率で年金額が下がっても、買えるものは同じです。
もしこれを実行してしまえば、高齢化社会の日本で「年金が減った」と大問題になるので、手をつけられないのです。
まとめ
今回は、マクロ経済スライドについてご紹介しました。
年金の受給額を減らすのが、マクロ経済スライドの目的でインフレ時には機能しています。
しかし、デフレの時には機能していないので、問題点として残っています。
ぜひ、参考にしてみてください。